字幕なしでの視聴
字幕なしだと、より映像に集中できます。
冒頭で事件の概要や人物名がわかってから字幕をオフにするとラクです。気づいたら字幕なしで最後まで行っていた、となることもあるでしょう。
知らない単語が出てきて、気にしないで進めても、何が起きているか映像でだいたいわかります。必要なら戻して、聞き直すか字幕を確認すればいいのです。
「そんな見方だと抜けが多くてもったいない」と思ったら、初めて見る時は字幕ありにするとか。
大事なのは、絶対に苦痛を感じないようにすることです。楽しい視聴の妨げになるような修行的考えは持たず、なるべく時間を作ってたくさん見るのが結果的にはいいと思います。
聞こえなかったら音量を上げる
私は以前、仕事で英語インタビューのテープ起こしをすることがありましたが、聞き取りにくかったら「音量を上げる」のが基本だと思いました。当たり前すぎてすみません。
なんとなくダメな時は、子音がはっきり聞き分けられるまで音量が上がっていなかったりします。
可能な限り音の「質」も上げたいです。イヤフォンやヘッドフォンを使うと格段にクリアになるでしょう。
ただ、キャラクターの属性(出身地、年齢、所属グループ)によっては、話し方の特徴を表すために、習ってきた英語とだいぶ違う発音や語法が使われていて聞き取りにくくなることはあります。
たとえばヒップホップ界隈の英語は私には難しいので、「Empire 成功の代償」は字幕ありで見ていました。
南部英語も聞き取りが時々難しいです。「NCIS: ニューオーリンズ」主要メンバーのクリス・ラサール捜査官は、地方色担当なのかアクセントの強い話し方で、これがニューオーリンズの言葉かと思ったら、アラバマでした。演じる俳優ルーカス・ブラックもアラバマ出身なので正しい南部英語になっているようです。
「クローザー」のブレンダ・リー・ジョンソンも南部アクセントですが、「風と共に去りぬ」のアトランタだからか女声だからか主人公だからか、聞き取りにくくはないように思います。方言のおばちゃんが特別待遇で来て仕切りだし、チームに反感を持たれた初期に、南部アクセントを一番強く感じました。
聞き取りやすさには俳優の声質と自分との相性もありそうなので、状況により無理せず字幕を見ています。
事件関係者の東洋人、中南米人、東欧人などは、カタコトという設定であっても、わりとわかりやすい範囲の訛りを使うことが多いです。
テレビ番組で英語を浴びる
昔、留学する前に、事務局の人が説明会でしてくれた話があります。
ある州に、会話が全然できずに悩んだ男子留学生がいました。
その男子は、挨拶くらいはできるものの、あとは一言も喋ることができず、通学する以外はホームステイ先の家に引きこもっていたそうです。
「喋れるようになる気がしない」……彼はそう思い、帰宅すると残った時間をずっとテレビを見て過ごしました。いろいろな番組をひたすら見続けて、何週間も経ってしまいました。
そんなある日、突然、彼の口から自然に英語が出てきました。本人が一番驚いたそうです。
耳から入った言葉が体の中に溜まっていって、臨界点を超え、覚醒したのでしょうか。
そして残りの留学生活を、楽しく充実させることができたといいます。半信半疑ながらも、人によってはあり得るのかもしれないと思いました。
その話を思い出して、試しにフランス語のドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」1-9(NHK)を、字幕なしで見てみました。
フランス語の学習経験なし、登場人物のことは知っている状態でどのくらい入ってくるものか。
……10分と続かなかったです。いきなり知らない言語でやるのは苦行でしかない。「ドラマで語学を」と、気軽に勧めるのもいかがなものかと反省しました。
浴びて浸かってどころか、かけ湯段階で挫折です。
他の外国語を学ぶ時も、基本を学んでから、浴びるほど聞くフェーズに入らないと、時間がかかるし嫌気が差してしまう恐れがあります。
思えば、中高の授業とラジオ英語教育番組4年分は、すごく役に立っていたのでした。
字幕あり視聴も翻訳スキルアップには良い
リスニングスキルは、楽しんで視聴しながら、ある程度は上げることができると思います。昔、とあるテストを初めて受けてリスニング満点を取りましたが、それは当時「新スター・トレック」を字幕ありで3周ほど見ていたおかげです。
ただ、テストはテストに過ぎず、履歴書に書く分には便利ですが、「英語のプロの仕事」を志すとなると別次元の難しさがあります。
語彙も、一般家庭で楽しむコンテンツで増やすだけでは、たとえ常に字幕なしで見ていても全然足りない。聞いているだけで話せるようにはならないので、ビジネス英語レベルにも届きません。
通訳を目指している人には、ドラマ鑑賞だけでは時間がかかりすぎるし、ちゃんとした専門的訓練が必要です。楽しいランニングだけでプロのスポーツ選手にはなれないのと同じです。脳のマルチタスク管理だけでも相当きついと、通訳者のエッセイなどで読んだことがあります。また、仕事で通訳もしていてほぼネイティブなのに、字幕翻訳に手を広げたくて専門の学校に行った人も知っています。
翻訳をやっていきたい人は、分野によっては専門的訓練がいるでしょうが、知人の翻訳家や翻訳者を見ていると、自己研鑽とOTJでやってきた人が多いです。
字幕ありの視聴は、翻訳の勉強には役に立つと思います。字数制限で省略している部分を聞き取りつつ、うまい訳も多く目にすることができるので。
日本人が前提を知らないジョークで笑いが取れるように、ダジャレがダジャレになるように、短く上手に訳すのは大変です。翻訳者の方々、いつもありがとうございます。