ブラックリスト
米NBCの「The Blacklist」(邦題「THE BLACKLIST/ブラックリスト」)は、最重要クラスの指名手配被疑者であるレイモンド・“レッド”・レディントン(Raymond “Red” Reddington)がFBIと協力して、自分の持つ「ブラックリスト」にある危険な凶悪犯を一人ずつ教え、基本的に一話完結型で処理していくクライム・サスペンスです。
レディントンは突然、ワシントンD.C.のFBI本部に現れ、まだ捜査側が存在さえ知らないような犯罪者情報を、条件付きで提供しようと申し出ます。
その条件は免訴と、レディントンから話を聞く担当者を、エリザベス・“リズ”・キーン(Elizabeth “Liz” Keen)だけにする、というもの。新人捜査官として配属初日のエリザベスは、教師のトム(Tom Keen)と結婚生活を送っていて、レディントンのことなど知らないし、「なぜ私が?」「レッドの目的は?」と訝しみます。
違法行為を重ね、富を成したレディントンは、FBI特製の部屋に拘束されますが、優雅な物腰で質問をはぐらかし、真の目的などもちろん言わないし、FBIを手駒とみているようでもあります。必要があれば金持ちらしく自家用機などで動き、かつて旅した世界の風光明媚な場所や心打たれた芸術の思い出などを語ります。役に立つ人物を金で動かすこともあるし、忠誠心や信念を持ってついてきている人物もいます。
FBIではテロ対策部次官(Assistant Director)のハロルド・クーパー(Harold Cooper)が、特別チームを指揮してブラックリスト各案件の対応にあたります。これにより事件を未然に防げたり、一つの事件の裏にあった巨悪を退治できたり、あるいはレディントンのライバルを無力化したりすることになるわけです。
エリザベスは、幼い頃に母を亡くし、実家に父がいるのですが、記憶に空白の期間があります。また、家の中から夫のトムに関する謎の冊子が出てきて混乱します。
レディントンというキャラクターは、FBIに情報提供した実在の指名手配被疑者、ジェームズ・ジョセフ・“ホワイティ”・バルジャー(James Joseph “Whitey” Bulger)にインスパイアされて誕生したとのことです(The Hollywood Reporter)。
国際的に暗躍してきたレディントンなので、場面はアメリカ国内にとどまらず、また「ブラックリスト」にある犯罪者の種類も多岐にわたります。FBI捜査官や、レディントンを護衛するデンべ(Dembe)がいるので激しいアクションシーンにも事欠きません。しかしながら真髄は、裏の裏がある心理戦で、裏切りや偽装死もあり、予想が意味をなさない展開になることもあります。
当初はまだヨーロッパが平和だった時代でしたが、戦争が始まり、コロナ禍を経て(一部、アニメーションで進行していました)、ドラマのトーンも変わってきました。重要人物が死に、ブラックリストに載っている人々が片付いて、レディントンは何を思うのか。最終話を見たあとは、長いため息とともにいくつかのシーンを思い返すことになるでしょう。