アリバイ
「alibi」(アリバイ)の聴取は「犯行があったとみなされる時刻にどこにいたか?」から始まり、並行して集めている証拠があれば照合して、矛盾点を明らかにしていきます。
Gibbs: Where were you Wednesday night?
<被疑者>: At home with my wife.
Fornell: Well, we checked with her, <被疑者名>. She said you went out. Didn’t come back till around midnight.
<中略>Fornell: You have means, you have motive and you have no alibi, <被疑者名>. (NCIS 2-19)
ギブス「水曜日の夜はどこにいましたか?」
被疑者「妻と自宅にいた」
フォーネル「奥さんに確認しましたよ。あなたは外出して、午前0時頃まで戻らなかったと言ってました」
<中略>
フォーネル「あなたには(犯行の)手段があり、動機があり、アリバイはない」
アリバイの有無がはっきりしない場合、「かたさ」について議論したり、崩れそうな場所を狙って証拠集めをしたりします。
「かたい」アリバイを漢字でどう書くかですが、「強固なアリバイ」という表現もあるので、「固い」が一般的でしょうか。ただ、「固(←→緩)」 「硬(←→軟)」 「堅(←→脆)」 (軟・柔は全部の対義語)のいずれもありうるので、全部OKと言っていいでしょう。
そもそも、別の場所にいたかどうかは「YES / NO」でしかないので、固さの程度は気分的な表現になっています。
固い場合は「solid」が標準で、それ以上の感じがあると「airtight」(気密の→隙のない)、「rock-solid」(岩のように固い)、「ironclad」(甲鉄の→鉄壁の)、「cast-iron」(鋳鉄の)といった比喩で強調されます。「perfect」(完璧な)、「pretty good」(そこそこ良い)もよく使われます。
Her alibi is solid. She’s not our unsub. (Criminal Minds 4-2)
彼女のアリバイは固い。(我々が探していた)犯人じゃない。
My client has an ironclad alibi. (The Blacklist 6-18)
私の依頼人には鉄壁の(甲鉄の)アリバイがある。
弱い場合、「shaky」(ぐらついた)、「flimsy」(もろい)、「lousy」(ひどく劣った)と言った形容詞が付きます。
D.B.: <被疑者1>’s alibi’s a little shaky.
He said he clocked in to work at 7:00, but nobody could verify that he spent the whole night there.Finn: <被疑者2>’s alibi’s even shakier.
She said that she was drinking and gambling all night but can’t remember all the casinos she went to after mojito number three. (CSI 12-15)D.B.「<被疑者1>のアリバイは少し揺らいでいる。7時に出勤した(出勤記録をつけた)と言うが、一晩中そこにいたと実証できる人はいなかった」
フィン「<被疑者2>のアリバイはもっとグラグラしてる。彼女は夜通し飲みながらギャンブルしていたと言うけど、3杯目のモヒート以降、行ったカジノがどこなのか思い出せないって」
申告されたアリバイの内容によっては、捜査側は目撃者探しからしなければなりません。
Hey, Esposito, run down <被疑者>’s alibi. Talk to doormen, chauffeurs, the whole gamut. (Castle 2-8)
エスポジート(捜査官)、<被疑者>のアリバイを追跡して。ドアマンとか運転手とか範囲内の全員に話を聞いて。
Problem is, no one can corroborate her alibi. (Lucifer 1-8)
問題は、彼女のアリバイを誰も裏付けられないことだ。
アリバイを証明するものや、犯行現場から離れた場所で一緒にいた人のことも「alibi」と言います。
Rigsby, why don’t you go and talk to his alibi, the swimsuit model? (The Mentalist 2-13)
リグスビー(捜査官)、彼のアリバイに話を聞いてきて。例の水着モデルに。
アリバイが証明されると「alibied out」「alibi checked out」「alibi cleared」となります。
Well, we had a suspect, but his alibi checked out. (S.W.A.T. 3-14)
被疑者が一人いたんだが、彼のアリバイは証明されてしまった。
しかし、アリバイが用意されすぎていると、工作の匂いがしてかえって怪しくなります。
In my experience, innocent people do not prepare alibis. (Castle 1-1)
私の経験では、無実の人々はアリバイを用意しないものだ。
If you provided a false alibi, that makes you an accomplice. (Castle 7-13)
偽のアリバイを用意したのだとすると、あなたは共犯者ということになりますね。
「ブラックリスト」シーズン5のエピソード14・19には、「The Alibi」と呼ばれる、アリバイ工作の専門家が出てきます。
どういう犯罪者なのか、レディントンから情報を得ているナヴァービとモジタバイが、上長のクーパーに説明します。
Navabi: Apparently, The Alibi only works with people who want to commit the crimes themselves. He doesn’t offer hit men, only alibis.
Mojtabai: That allow people to be in two places at once.
Navabi: The Alibi can exonerate anyone from any crime by getting people he’s never met to swear to things they’ve never seen. (The Blacklist 5-14)
ナヴァービ「”ジ・アリバイ”は自ら手を下して罪を犯したい人のためだけに仕事をするものとみられます。殺し屋は提供しません。アリバイとなる替玉だけです」
モジタバイ「依頼人は、同時に2か所に存在できるようになるんです」
ナヴァービ「”ジ・アリバイ”は目撃者に会わずして、目撃していないことを証言させ、どんな犯罪も無罪にできてしまうのです」
このエピソードの冒頭で、妻に浮気された男(いわゆるサレ夫)が、ルーティーンを構築して毎日複数人に目撃されるよう”ジ・アリバイ”に指導を受けていますが、これはもちろん”ジ・アリバイ”の完全性にとっても、犯罪歴にとっても氷山の一角なのでした。