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ミランダ警告

Miranda Warning

逮捕のシーンでは、黙秘権などを被疑者に告知しているのをよく見ます。

これは「Miranda Warning」(ミランダ警告)と呼ばれ、「権利の告知」などとも訳されます。アメリカではこの警告をしないで取り調べをしてしまうと、被疑者の供述が法廷で証拠として採用されなくなってしまいます。

ミランダ警告は、取り調べ中に警察の「圧」などにより自供してしまうことを避け、被疑者の黙秘権(米国憲法修正5条)や弁護士選任権(修正6条)を守るために義務付けられたものです。1966年のミランダ氏(男性のラストネーム)対アリゾナ州の裁判がこの呼ばれ方の由来になっています。

ドラマでは省略されたり、途中でフェードアウトしたりすることが多いですが、たまに全部読まれます(読む、というが暗記しているので紙などは見ていない)。

「クリミナル・マインド」シーズン4-12の冒頭では、ある男性を逮捕しに来た刑事がこの「権利の読み上げ」をフルバージョンでやっていました。本来必要な「理解しましたか?」「はい」も省略されていません。

Detective: <被疑者名>, you are under arrest for the kidnapping of <被害者名> and the murder of 3 women.
You have the right to remain silent.

Suspect: You have a warrant?

<令状見せる。中略>

Detective: Anything you say can, and will, be held against you, in a court of law.
You have the right to have an attorney present during the questioning.
If you cannot afford an attorney, one will be provided for you.
Do you understand these rights?

Suspect: Yes. (Criminal Minds 4-12)

刑事「<被疑者名>、<被害者名>の誘拐と女性3人の殺害容疑で逮捕します。
あなたには黙秘権があります」
被疑者「令状はあるのか?」<令状見せる。中略>
刑事「発言はすべて、法廷であなたに不利な証拠として使われる可能性があります。
あなたには尋問の際に弁護士を同席させる権利があります。
弁護士を雇う金銭的余裕がない場合は、公選弁護人をつけることができます。
これらの権利を理解していますか?」
被疑者「はい」

黙秘権、供述が不利な証拠となりうること、弁護士選任権、公選弁護人をつける権利の告知が入っていればよく、細部の表現はいろいろです。

「ブラックリスト」シーズン7-14では、ラストで静かにBGMが流れる中、アラム・モジタバイ捜査官がこれを読みます。いつものミランダで全米を泣かす。そんな気概が感じられる演出でした。

Aram: You have the right to remain silent.
Anything you say can and will be used against you in a court of law.
You have the right to an attorney.
If you cannot afford an attorney, one will be provided for you.

Do you understand these rights I have just read to you? (The Blacklist 7-14)

※「right to an attorney」だけで「弁護士を雇う権利」になります。

「ミランダ警告を読む」という動詞「Mirandize」もたまに出てきます。

Attorney: You’re holding my client in your custody, and you didn’t even Mirandize her? (Major Crimes 1-3)

弁護士「あなた方は私の依頼人を拘束しながら、ミランダイズもしていなかったのですか?」

Rizzoli: What, our killer’s a zombie?

Korsak: That’d be fun. Probably wouldn’t have to Mirandize him or anything. (Rizzoli and Isles 5-11)

リゾーリ「まさか殺人犯はゾンビ?」
コーサック「だと面白いな。権利とか読んだりする必要もないだろうし」

こちらも動詞の「Miranda」。

What are you going to do now, Miranda me? (Numbers 6-2)

カリフォルニアの警察官であるノーランは、ある事件で黙秘権がないことを警告されました。

Commander Percy West: Officer Nolan, per government code 3300 and Lybarger, I am required to advise that you do not have the right to remain silent.
Anything you say can and will be used against you.
Refusal to fully and completely answer all of my questions will result in your immediate termination and referral to the District Attorney for prosecution.
Do you understand?

Nolan: Yes.

West: Having received the Lybarger warning, do you give up your right to remain silent, and will you honestly and without reservation answer all of my questions? (The Rookie 3-1)

パーシー・ウエスト警視「ノーラン巡査、(カリフォルニア州)行政府規約第3300(の3303)項目とライバーガー(警告)により、あなたに黙秘権がないことを伝える必要があります。
供述はあなたに不利に使われることがあります。
私の質問のすべてに十分な形で答えることを拒んだ場合には、即座に解雇され、検察に身柄を移して起訴されることになります。これを理解しましたか?」
ノーラン「はい」
ウエスト警視「ライバーガー警告を受け入れた上で、黙秘権を放棄し、私の全ての質問に、正直に留保なく答えますか?」

用例

    • So unless you want to learn your Miranda rights, you better quit stalling and show us where it is. (逮捕されたくなかったら)(Castle 3-10)
    • Please be sure to read him his rights, because his lawyer will be there. (Major Crimes 2-8)
    • No one read me my Miranda rights. (NCIS 4-3)
    • He didn't fit the profile exactly, but he waived his rights and admitted to all 8.(権利を放棄して) (Criminal Minds 9-12)
    • I'm advising <人名> to invoke his Fifth Amendment rights. (CSI 1-20)

付記

ミランダ氏(Ernesto Miranda)は、アリゾナ州での誘拐および婦女暴行事件の被告で、州裁判所で有罪とされたが、連邦最高裁判所で1966年に「黙秘権、弁護人選任権の告知がされずに自白を証拠としたのは、米国憲法の修正第5条、6条があるので無効」と意見が出され、裁判のやり直しが命じられた。

結局、自白以外の証拠、元・内縁の妻の証言もあって、ミランダ氏は有罪となり20-30年の刑で服役したが、1972年に仮釈放された。その後、自分のサイン入りミランダ警告カードを売るなどしていたが、結局フェニックスのバーで刺されて1976年に死亡した。

ライバーガー氏(Michael Lybarger)はロサンゼルス市警の警察官で、他3名の警察官とともに、違法な賭け屋(bookmaker)を泳がせて点数稼ぎをしたい時に逮捕するという不正行為の疑いをかけられ、取り調べに協力せず黙秘権を使ったために1980年に解雇された。

汚職の方は罰金と保護観察処分となったが、ライバーガー氏は解雇を不服として訴えた。ロサンゼルス高等裁判所は「尋問は適切だった」としたが、カリフォルニア州最高裁判所で覆され、ロサンゼルス市警はライバーガー氏を復職させ、弁護士費用を払い、警察官として受け取れたはずの過去の給料まで払わされることになった。

参考