捜索令状
隠語でガサフダ、ガサビラ、ガサ状などとも呼ばれる捜索差押許可状。
被疑者・関係者の自宅やオフィスに立ち入って、証拠などを探す「捜索」(「ガサ」←さがす)=「search」を行う場合、強制捜査であれば令状(オフダ)「warrant」が必要になります。
日本だと「あなたに対する〇〇に関する法律違反で、裁判所から捜索差押許可状が出ています。〇時〇分、開始します」といった丁寧な言い方をするようです。現実では「ガサフダだ。外に出ろ」なんてことにはならないと思います。
メディア用語で言う「家宅捜索」(house search / search the premises)は、人の捜索と明確に区別できますが、刑事訴訟法上の用語は単に「捜索」です。
「premise」は構内、店内のことで、サーバーも「オンプレミス(on-premises)」だと、クラウドではなく、自社が管理する場所に置く「自社サーバー」になりますね。
令状はアメリカでも日本でも、裁判官が強制捜査を許可したことを示す書面で、捜索なら「捜索差押許可状」「search and seizure warrant」、逮捕(通常逮捕)なら「逮捕状/逮捕令状」「arrest warrant」、死刑執行令状なら「death warrant」、本人の承諾なく家宅捜索ができる令状なら「no-knock warrant」となります。
令状を出すことを令状の「発付」(「発布」ではなく)といい、ドラマの会話では「sign the warrant」と言っていることが多いです。
まずは任意で家に入れてもらうのですが、すんなりドアが開いたり、ひと悶着あったり。被疑者がどんなタイプで、どんな顔をしているか、家族はいるかといった、視聴者への簡単な被疑者紹介も兼ねているかもしれません。
令状がないと踏み込んだ捜査ができず、令状を取るには時間がかかる。捜査に協力したくない人は、それを見越して嫌味を言ってきます。
I don’t talk to cops unless you got a warrant. (Criminal Minds 6-12)
令状を持ってこない限り、警察とは話さないことにしてるんで。
また、令状を持って関係者の家に行くと、関係者が怒りだしてしまうのも「あるある」の一つです。
Curtis: Sir, we have a warrant to search the premises, and we need you to come down to the station.
If you can’t make arrangements for your child, we have a Child Services Advocate who can take him.Man: This is ridiculous. I’ve been nothing but cooperative.
You harass me at my place of work. You harass me at my home. Now you want to take my kid away?Curtis: Sir, are you resisting? (CSI 7-8)
カーティス刑事「家宅捜索の令状です。署へご同行願います。お子さんをみる人の手配がつかないなら、児童保護局がありますので預かってお世話をします」
男性「そんなのおかしいだろう。僕はずっと捜査に協力していたよね。なのに職場にまで来て迷惑させ、家にも押しかけて来て。今度は子供を連れて行くだと?」
カーティス「抵抗するのですか?」
令状請求が不備でもないのに却下されると、捜査官は裁判官を説得に向かいます。被疑者が裁判官の周囲で、何らかの細工をしている場合も……。
Van Pelt: The judge denied the search warrant for <人名>.
(Lisbon、判事の部屋へ)<中略>
Lisbon: I need you to reconsider signing the <人名> warrant, please.
Davis: It’s not going to happen.
Lisbon: Why not? We have clear evidence of payment for the commission of murder. (The Mentalist 5-11)
ヴァンペルト捜査官「<人名>の捜索令状の発付ですが、判事に拒否されました」
<中略>
リズボン捜査官「<人名>の令状の件、ご再考いただけませんか。お願いします」
デイヴィス判事「それは無理です」
リズボン「なぜですか? 殺人の報酬が支払われている明らかな証拠があるのに」
「ブラックリスト」の捜査チームはFBIなので、必要に応じて盗聴などもします。FBIも令状を取って捜索します。
Samar: Aram, what have you got?
Aram: All right, the money for the room was wired from a phony overseas account, but I do have a cell number used to book the reservation.
Mr. Cooper is expediting a warrant for a tap. (The Blacklist 3-13)
サマル「アラム、何かわかった?」
アラム「うん、ホテル代は海外の偽名口座から送金されているけど、予約に使われた携帯番号はわかった。
クーパーさんが盗聴許可状を急いでくれているよ」
情報出しを渋る関係者に、令状で不自由するのはそちらだと納得させ、口を滑らかにさせる方法もあります。
Now, I don’t want to shut your business down with a warrant and search your premises, but I will. (White Collar 1-12)
さて、令状であなたの商売を止めてしまって、店を捜索したくはないですが、(必要なら)やりますよ。
「相棒」の神戸尊が杉下右京の芝居に乗って、健康診断の紙を逮捕令状のようにかざしたこともありましたが、何らかの紙をちらつかせる(何の紙とは明言せず)場面もたまに見かけますね。